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孤食は“高齢者の問題”ではない 食育白書(平成28年度)に見る「日本の食の課題とこれから」

2018年6月26日 コラム 介護一般 高齢者の食事

孤食は“高齢者の問題”ではない 食育白書(平成28年度)に見る「日本の食の課題とこれから」

食事が心身に大きな影響を与えることは広く知られていますが、食事は同時に、ないがしろにされがちなものでもあります。特に高齢者に関しては、介護予防、QOL向上などのために健康的な食生活を送ってもらうことが重要だとかねてから言われています。

農林水産省は5月29日、今年度の食育白書(平成29年度食育推進施策)を発表。ここでは、国内の食をめぐる状況がデータとともにまとめられています。今回は、その中から高齢者の食環境の実態、その改善に向けた行政の動向などをご紹介します。

高齢者だけではなく、社会的な課題となっている孤食

今年度の食育白書で、最初に取り上げられているのは「孤食」の問題。年代にかかわらず、約9割の人が「家族と一緒に食事をすることは重要」と認識している一方、週の半分以上、一日間の全食を1人で食べている人は約15%おり、平成23年から増加しているとしています。

「家族と一緒に食事をすることが困難な理由」について尋ねた意識調査では、20歳代~70歳以上までの全年代で「自分又は家族の仕事が忙しいから」という回答が7~9割。働き盛りの若い年代はともかくとして、着目すべきは高齢者まで仕事を理由に挙げていることでしょう。

家族と一緒に仕事をすることが困難な理由

農林水産省より

当然ではありますが、誰かと食事をともにすることは1人ではできません。長時間労働などによるワーク・ライフ・バランスの悪化が、他の年代にまで影響を及ぼしているものと思われます。つまり、一緒に食事することは重要だと感じつつも、仕事という家庭外の問題から孤食せざるを得なくなっている、というわけです。

このように孤食の拡大には、社会的な変化が深く関わっていると想定されており、農水省は「単独世帯」「夫婦のみの世帯」「ひとり親世帯」の増加についても言及しています。

近年は、一人暮らしをする65歳以上の高齢者が増加傾向を示しており、平成27年(2015年)時点では男性が13.3%、女性が21.1%。2040年には、これがさらに増加すると推計されています。孤食は単なる個人の問題ではなく、社会的に解決すべき課題として捉える必要がありそうです。

ところで、孤食にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。近年の研究結果によれば、誰かと一緒に食事をする頻度が高いと、心理面でポジティブな効果があるだけでなく、ファストフードの利用が少なくなり、野菜や果物などの摂取量が多くなるといいます。

高齢者の孤独、食生活は、介護の世界ではかねてから重要視されているテーマです。今後も続くであろう孤食の問題は、介護業界が力になりやすい分野といえるのではないでしょうか。

8020運動の推進、高齢者向け配食サービスの拡大

この他にも食育白書では、高齢者に限定されたテーマとして「8020(ハチマル・ニイマル)運動」「配食ガイドライン」が取り上げられています。

8020運動とは、平成元年(1989年)から日本歯科医師会が推進しているもので、「80歳になっても20本以上自分の歯を保つ」ということを目指しています。これに関しては、厚生労働省を通じて都道府県の取り組みを支援していくとのこと。

また、自宅などで生活を送る高齢者の食事支援の重要性が高まっていることから、厚生省は平成29年(2017年)3月、配食に関する該当事業者向けのガイドラインを公表。平成30年(2018年)1月には、この内容を踏まえた配食サービス事業者、利用者双方に向けた啓発パンフレットを、インターネット上で公開しています。

配食サービスの拡大はまだ途上にありますが、食育白書では、今後「本格的な普及」に至るとされており、行政が重要視していることがはっきりと見て取れます。