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海外の介護制度と食事情はどうなっている?

2017年5月19日 コラム 高齢者の食事

海外の介護制度と食事情はどうなっている?

欧米諸国の大統領選は日本でも大きな話題を集めました。そんな海の向こうの国の高齢者はどんな食事をしているのでしょうか?今回はアメリカ・イギリスの介護制度と各国の介護食についてご紹介します。

 

ちょっと違う?欧米の介護制度

欧米では介護のことを「ロングタームケアサービス(Long-Term Care Service)」といいます。

介護サービスは主に

① アダルト・デイ・サービス・センター(Adult Day Services Centers)
② レジデンシャル・ケア・コミュニティ(Residential Care Communities)
③ ホーム・ヘルス・エージェンシー(Home Health Agencies)
④ ホスピス(Hospices)
⑤ ナーシング・ホーム(Nursing Homes)

の5つに分かれています。日本のデイサービスにあたるものは①です。老人ホームにあたるものは②と⑤ですが、それぞれ自立型と支援(介護)型に分かれます。④は終末期ケアを提供するサービスです。

 

イギリスでは「コミュニティケア法」と呼ばれる介護保障によって介護サービスがなされています。これは自治体が中心となって介護サービスを行う制度です。また、介護サービスの料金は税金及び利用者負担ですが、利用者負担分は応能負担となっているため、応益負担と比べ負担は軽減されています。

 

日本では「スマイルケア食」の取り組みが始まっています

「やわらか食」や「ソフト食」と呼ばれるものをご存知でしょうか。噛む力や飲み込む力が弱い方のために作られた、やわらかく加工して食べやすくした食事のことです。他にも小さくきざんだ「きざみ食」、ミキサーにかけて液状にした「ミキサー食」、補助的に使用する「とろみ調整食品」など、介護食にはさまざまな種類が存在します。

2002年に設立された日本介護食品協議会は「ユニバーサルデザインフード」という介護食の規格を作りましたが、あくまでも自主規格にすぎませんでした。しかし、2014年、ついに農林水産省は「スマイルケア食」という低栄養の方も対象にした新しい介護食の取り組みを始めました。

低栄養の方には青色、咀嚼が困難な方には黄色、嚥下が困難な方には赤色、といったように区分けされ、より分かりやすく、より選びやすい介護食の流通を図っています。

 

スマイルケア食(新しい介護食品)|農林水産省

 

アメリカの介護食は“セントラルキッチン”が主流

アメリカの介護食はほぼ日本と同様です。しかし、ホーム施設の食事は基本的にセントラルキッチン(調理センターのようなところ)で一度に調理しているため、市販の調理・加工済み食品を提供する事はほとんどありません。メニューは国の食文化に合わせてあり、「ステーキ」「オムレツ」「ビーフシチュー」といったものが出されています。また、アメリカでは本人の意向が最も尊重される傾向があり、施設の食事を食べずに家族に買ってきてもらった食事を食べる方も多いそうです。

在宅介護の方向けには配食サービスの他にも、冷凍食品や長期保存ができる食品の販売・配達のサービスがあります。

 

米国の介護施設にて提供されている介護食品事情|日本貿易振興機構(JETRO)

 

ベジタリアンでも安心なイギリスの介護食

配食サービスは受給選考のある自治体のサービスの他に、民間企業やボランティアが行っているものがあります。配食サービスを行っている企業「apetito」では、嚥下が困難な方のためのソフト食に加え、低栄養、低糖および低脂肪食、ビーガン・ベジタリアン、グルテンフリー、アレルギーの対応などの幅広い食事を揃えており、メニューにはチキンパイ、サーモンシュプリーム、野菜のボロネーゼといったメインやラズベリーのデザートなど、イギリスのメジャーな食事を提供しています。

 

イギリスの介護施策と障害者施策 – 国立社会保障・人口問題研究所

諸外国における介護保障制度の比較|厚生労働省

Our foods|apetito

 

3Dプリンタで作られた革新的な介護食も誕生

ドイツの企業「Biozoon」は嚥下が難しい方でも飲み込みやすいゲル状の食品を3Dプリンタで作ることに成功しました。「スムースフード(smooth food)」と呼ばれ、食材を寒天やアルギン酸ナトリウムなどのゼリーのような食感を作り出す食品添加物と混ぜあわせて3Dプリントすることで、見た目や食感、固さ、量などあらゆる調製が可能になりました。もちろん栄養面もご心配なく。

そんな革新的な3Dプリント食をひとりひとりの栄養状態や好みに合わせて作り、さらには配達までしてくれるという至れりつくせりなサービスもあるようです。

 

高齢者向け治療食を3Dプリントするドイツの会社|TechCrunch Japan

Scientists develop 3D gel food that looks just like our everyday meals|MailOnline

SENEOPRO®|biozoon

 

尊厳が守られる食事の大切さ

誰しもが日々年老いています。体はだんだんと言うことを聞かなくなり、外見も変化していくでしょう。そうして出される食事が毎回流動食になったらどうでしょうか。これまで食べてきた白米は粒が見えるか見えないかのおかゆになり、おかずは一見するとなんの食材か分かりません。気道に入ると危険なのですべてにとろみがつけてあります。そんな食事がこれからずっと・・・。一概に流動食を否定するわけではありませんが、人としての文化的な生活がなくなったそのときから、尊厳は失われていると言えるのではないでしょうか。年老いても楽しみたい、人として。食事は尊厳に直結している大事な生活の一部です。介護食の発展は尊厳の発展でもあります。最期までおいしい食事が食べることができたら、これ以上ない幸せだと思いませんか?