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「科学的裏付けに基づく介護」でデイサービスはどう変わる?

2017年12月19日 コラム 介護一般

「科学的裏付けに基づく介護」でデイサービスはどう変わる?

厚生省で2017年10月から「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」が開催されています。背景にあるのは効果的な高齢者自立支援の実現、介護サービスの多様化による選択難への対策などが考えられますが、介護の世界でエビデンスを活用しようというアイディア自体は、決して珍しいものではありません。

例えば、認知症予防の効果を確かめるために、大学などの協力のもと脳科学的な調査を行う取り組みは、民間でも盛んに行われているのです。これらにも同様に、より良い介護の手法を確立する、サービスとしての優位性をアピールして利用者を獲得するといった狙いがあります。

しかし、今回の検討会は、エビデンスの利活用を介護保険制度の一部として大々的に行うことを念頭に置いたもので、全国の介護事業者に影響します。これによって日本の介護のあり方は、どのように変わるのでしょうか。

介護保険総合データベースをケアのエビデンス獲得に

かねてから介護分野では介護保険総合データベースが利用されており、ここには介護保険給付費明細書(介護レセプト)などが記録されています。しかし、提供されたケアの内容は入っておらず、実際にどんなことが行われているのかまでは分かりません。

「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」で大きなテーマとなっているのは、このデータベースの使い方。登録項目を追加し調査に使えるようにすれば、高齢者の自立した生活を送ってもらうためのサービス質向上などに役立てられるのではないか、というわけです。

このようにして介護の実践からエビデンスを得る仕組みができたら、次はそれを実践に活かす段階となります。すでに閣議決定されている「未来投資戦略2017」によれば、2019年度から新仕様のデータベースの試行運用がスタートします。

数年内には、データ分析によるケアの科学的な裏付け、高齢者の自立支援に効果のあるものへのインセンティブ付与、国民への情報公開などが行われる予定です。

「科学的裏付けに基づく介護」の懸念点

これらの施策が実施された場合、介護の現場にはどのような変化が起こるのでしょうか。長期的に見れば、より良い介護の実現につながるかもしれませんが、ここでは直近の懸念点を2点取り上げます。

介護事業者の負担増大

まず考えられるのは、項目数増加により入力などの手間が増えること。例えば、未来投資会議の資料では、新たに以下のような項目を追加することが提案されています。

  • 身長、体重
  • 血液検査
  • 筋力、関節可動域
  • 骨密度
  • 開眼片脚起立時間
  • 握力計測
  • 心機能検査
  • 肺機能検査

介護の世界で課題視されている業務負担の軽減とバッティングする動きであり、「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」では、収集するデータが細かくなりすぎないようにしなければならない、とされています。

また、ここには詳細すぎるデータは統計調査に向かないという理由もあり、“現場から離れた視点”から捉えたとしても理にかなっています。負担増大は、ある程度常識的な範囲で収まるのではないでしょうか。

介護レクリエーションが行いにくくなる可能性

データには「定量化しやすいものとそうでないものがある」という根本的な問題があります。そのためか、上記の追加項目例には身体的なテーマばかりが並んでいます。しかし、デイサービスなどで行われている介護レクリエーションの効果は、必ずしもうまく数値に落とし込めるわけではありません。

極端な例ですが、車椅子を押してもらって花見をする場合はどうでしょうか。心理的に良い効果をもたらし、QOLの向上につながることは期待できます。しかし、それが高齢者の自立支援にどう影響するのか、数量的に示すことは困難でしょう。

実際、今回の政府の動きに対しては、サービスが機能訓練に偏り、介護レクリエーションが行いにくくなるのではないかとの懸念があるといいます。日本の介護の形がどう変わっていくのか、今後の議論の展開を見守る必要がありそうです。